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冬美少年とお稲荷さまの噺・其の壱

月明かりに照らされた黒髪が、さらりと揺れる。腕を伸ばして、彼の瞼にかかる髪をそっとよけると、その瞳にはいつもの光がない。陶器のような肌に指を滑らせ、そっと撫でると、彼は困ったように笑った。 こうして彼と共に夜を過ごすのは何度目のことか。肌を…

雨の日の恋人・後編

ずっと雨が嫌いだった。湿気で髪のセットに手間取るし、靴や服が濡れて、雨の日は一日最悪の気分になる。雨の音を聞いているだけで憂鬱だったのに、いつからかそんなに悪くないんじゃないかと思い始めた俺がいた。 きっかけは高校からの付き合いの友人、瀬尾…

雨の日の恋人・前編

昨朝から降り始めた雨は、今もしとしとと地面を濡らしている。雨は嫌いじゃない。雫が屋根を叩きつける音が心地いいから。 ただ理由はそれだけではない。実のところは、雨の日になると決まって訪れる客人が待ち遠しいのだ。 ----ピンポーン、 ドアホンの…